種苗会社が販売している種の不思議 栽培記録 PlantsNote 
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トップページ > 特集 > 種苗会社が販売している種の不思議

1.店で売られている種が出来るまで

突然ですが、お店で売っている種がどうやって作られているか知っていますか?実はそこには種苗会社の戦略が詰まっています!!

種の入っている袋の裏側にはおそらくたいていのものが交配種だったりF1と書いてあるかと思います。この交配種とは、読んで字のごとく、形質の違う品種同士を交配させて作られた、いわば雑種です。
種苗会社は毎年、販売用の種を生産するために特定の品種同士を人工交配しています。わざわざ人為的に交配するなんてめんどくさいことをしていますよね。だがしかし、この交配なくして種苗会社は利益を上げることはできないのです。

2.雑種は親より優れている

販売されている種は雑種なのですが、雑種であることのメリットとして、
・ 両親の優れた形質(味、形など)を両方から受け継ぐことができる
・ 他の種苗会社がコピー品種を作ることを防ぐことが出来る の2点が挙げられます。

ではまず、なぜ両親の優れた形質を受け継ぐことができるのか、について説明します。

仮に、形はいいが味のよくない家系出身のトマトAと、形は悪いが味の良い家系出身のトマトBがあるとします。
トマトAは味の良くなる遺伝子Aを2つ持っていて、形の良くなる遺伝子Bは持っていません(AA/--)。
一方、トマトBは形の良くなる遺伝子Bを2つ持っていて、味の良くなる遺伝子は持っていません(--/BB)。
このトマトAとトマトBを交配させると遺伝子AとBを1個ずつ持った、トマトCが出来上がります(A-/B-)。遺伝子は基本的に1つ持っていればその効果を発揮するので、トマトCは形が良くて味も良くなります。
この現象はヘテロシス(雑種強勢)といって、両方の親の良い形質が子供に伝わり、親よりも優れたものになる現象です。
ただしこの現象が起こるためには、子に受け継がせたい遺伝子を親が2つ持っている必要があります。

3.種苗会社の囲い込み戦略

次に、なぜ雑種を販売することでコピー品種を他社に作られることを防げるのかについて説明します。

先ほどの雑種トマトCは味の良くなる遺伝子Aと形の良くなる遺伝子Bを1個ずつ持っている(A-/B-)と説明しました。ではトマトC同士を交配すると、どうなるでしょうか。 子供の形質はばらばらになり、トマトAに近いもの、トマトBに近いものやトマトCに近いもの、挙句の果てには味も形も良くないトマトなんかも生まれます。 今の例では2つの遺伝子のみで説明しましたが、実際はもっと多くの遺伝子でトマトを形作っているので、簡単にはトマトCを得ることはできません。さらに種苗会社は、種が得られないようにするあるいは得られた種が発芽しないように細工しています。

トマトCができる種を得るためには、やはり親であるトマトAとトマトBを交配しなければいけないのです。
このトマトAやトマトBは、トマトCの種を販売している種苗会社が隠し持っています。このようにして、種苗会社は自分たちの作った優れた品種(トマトC)を他の会社にコピーされないよう保護しています。
まさに種苗会社の生き残りをかけた戦略ですね!!

皆さんが普段何気なく使っている種や野菜にも、種苗会社社員の熱い思いが詰まっているんです。 皆さんが種を手に取るときに、今回の話をちょっとでも思い出してくれるとうれしいです。