野生種は資源の宝庫 栽培記録 PlantsNote 
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トップページ > 特集 > 野生種は資源の宝庫

1.今の栽培種は多様性に富んでいない

今回のキーワードは遺伝的多様性です!!
もうひとつ大きなくくりでいうと生物多様性ですね。

最近COP10という生物多様性条約に関する会議が行われていましたね。
会議の主要テーマは生物種の原産国とそれを利用して利益を上げた国との利益配分についてでした。
そもそも先進国がなぜわざわざ遠い国まで行って、野生種やその地域の固有種を見つけようとしたかって、ご存知ですか?
その理由のひとつをこれから紹介していきます。

前回紹介した、野生種から栽培種への変貌について少し思い出してください。
野生種は前回ご紹介したように、食べるには適していません。なので、長い年月をかけて先人たちが人の口にあう野菜に改良していきました。良い野菜だけを選抜して、また栽培しては選抜してってやつですね。
実はここに問題が隠れていたんです!

良い野菜だけを選抜していったおかげで、今の野菜は栽培種間であまり遺伝子構成の違いがなくなってきました。

どういうことかというと、
仮に大昔のトマトは1万パターンの遺伝子の組合せがあったとします。これが長い年月をかけて美味しいトマトが選抜された結果、9900パターンの可能性は除外され、100パターンの遺伝子の組合せのみに選抜されました。1万パターンの可能性があるよりも、100パターンの可能性のみに絞り込まれたほうが、似たような遺伝子の組合せになりやすいですよね。
このように遺伝子の組合せパターンの多い少ないを示す言葉に 『遺伝的多様性』 というものがあります。
トマトの例では遺伝的多様性が失われつつあると表現することができます。ちなみにこの状態になると、基本的にどの栽培種のトマトと交配しても美味しいものができます。なぜならまずくなる遺伝子は除外されているんですからね。
現在の野菜は競走馬で言うサラブレッドの状態になっているといえます。

2.サラブレッドは不測の事態に弱い

交配を繰り返し優良な栽培種のみを残すようにする(野菜をサラブレッド化する)というのは一見よさそうに思われるのですが、将来のことを考えると非常に危険な状態なんです。
新しい栽培種を作り出そうにも、現在の栽培種だけでは遺伝資源が乏しく、画期的な新種を生み出しづらくなっているんです。

では、新種が生み出しづらくなったことによる問題の例を挙げます。
例えばトマトのある病気が大流行して、世界中のトマトが壊滅的ダメージを受けたとします。こういったときの対処法は、病気に抵抗性のある栽培種を使って、現在の売れ筋の栽培種と交配し、新しく病気に抵抗性のある新種を作る、などがあります。さて、では親として使う抵抗性栽培種を探そうとします。しかし、実はそんな栽培種は存在していないなんてことがおきるかもしれません。なぜなら、長い年月をかけて、特定の栽培種だけを選抜して、それ以外のものを除外していったからなんですね。

このような不測の事態に対応するためには、サラブレッド栽培種を作成するだけでなく、色々なバラエティーの栽培種をストックしておく必要があります。

3.野生種は遺伝資源の宝庫

新しい栽培種を作るためには、色々なバラエティーの栽培種をストックしておく必要があると述べました。
ストックする栽培種には、味は良くないが形が良い、あるいは病気の抵抗性を持っているといったものも含みます。このような栽培種も育種の現場では重要ですが、遺伝資源という観点から見てもっと有用なものがあります。

それは、現在栽培されている野菜の野生種です。
野生種の中には現在の栽培種では除外されている遺伝子を持っているものもあります。除外された遺伝子の中には、実は野菜の形質として有用な遺伝子が含まれていたりします。例えば病気の抵抗性などですね。
現在の育種現場では、野生種を有効活用することによって、先ほどの例で言う病気に対する抵抗性を持った栽培種を新たに育種したり、生長の早い栽培種を作ったりしています。
もちろん野生種と栽培種を交配すると、味がまずくなるなど野菜の品質に悪影響を及ぼす遺伝子も受け継ぐことになります。そこで、種苗会社や農業試験場では野生種と交配した後に何度も現在の栽培種を交配しなおします。交配するたびに、病気の抵抗性など目的の形質を持ちつつ、現在の栽培種と味や形の近いものを選抜します。この過程を10回ほど繰り返すことで、目的の形質を持ちつつ、それ以外は現在の栽培種と同等の新種が作成されます。

今回ご紹介した『野生種』の確保は今後ますます重要になってきます。
ちなみにアメリカ合衆国では国家プロジェクトとして、世界中の野生種や希少種を採取して、保管しています。通称”ジーンバンク”(遺伝子銀行)と呼ばれています。
日本でもジーンバンクを設立し、様々な種の保管を進めていますが、アメリカほど潤沢な予算をあててもらえていないのが現状です。

今回はこの辺で終わりにします。また次回をお楽しみに!