生物は常に多様性を求めている 栽培記録 PlantsNote 
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1.生物の存在意義

近年ニュースで”生物の多様性が失われつつある”なんてフレーズを耳にすることがあります。人間の活動によって野生生物が減少してしまっているということです。では仮に生物多様性が失われてしまい、地球上に1種しか生物が存在しないようになってしまったら、その後地球はどうなってしまうでしょうか?
おそらく、しばらくは生きることができるでしょう。ただし気候変動などなんらかしらの変化が起こった場合に、うまく対応することが出来なければ、あっけなく滅んでしまいます。
その1種類が人間だった場合は何とかなりそうな気もしますが・・・
多くの異なる生物種がいれば、そのうちのいくつかはうまく変化に適応して生き残ることが出来るでしょう。

このように生物多様性とは、生物そのものが今後も繁栄していくためのキーワードです。そして生物多様性を維持するために子孫を繁栄させることが、生物にとっての使命ともいえます。ここでいう繁栄とは単に数が多いだけじゃだめですよ。異なる様々なタイプの子孫を増やすということです。

では子孫繁栄の方法として、生物は実際にどのような戦略をとっているか植物を例にご紹介していきます。その方法とは雌雄交雑と減数分裂です(専門用語ですみません)

2.雌雄交雑による多様性

ではまずは雌雄交雑についてです。字を見てもらうとなんとなくわかるかとは思いますが、ようは花粉と胚が受精することです。通常の細胞では染色体セットを2つ持っている(2セット)状態ですが、花粉や胚は1セットとなっています。花粉と胚が合体して、通常の2セットの染色体を持つ細胞となるんですね。

さて、父親と母親から半分ずつ染色体をもらうということは、子供は両親のちょうど中間の形質になるのでしょうか?現実世界を見ても、そんなことはないですよね。お父さん似だったりお母さん似だったりって言うのが普通ですよね。このメカニズムはちょっとややこしいですが、軽く説明します。

染色体の伝達パターンまず父親や母親はもちろん染色体をそれぞれ2本ずつ持っています。その対になっている2本の染色体はまったく同じというわけではありません。なぜなら父親自身も、両親から1セットずつ染色体をもらっているわけですからね(図1)。ということは、子供が父親から受け継ぐ染色体は祖父由来もあれば祖母由来のものもあるというわけです。これは母親から受け継ぐ染色体にもいえます。このような理由から、同じ両親から生まれた子供でも構成する染色体の由来が1本1本異なってしまうわけです。

3.減数分裂による多様性

そしてもう一つの多様性のドライバーとして減数分裂というものがあります。これは一つの生物が様々な遺伝子パターンの配偶体(植物で言う花粉とか胚)を作るためのイベントです。こちらはさらにややこしい話なんですが、概要だけざっくりと説明します。

配偶体は染色体を1セットしか持っていないという話を上でしましたね。でも通常の植物の細胞は染色体を2セット持っています。お気づきかもしれませんが、配偶体は素になる細胞を半分に分割することで作られます。対になっている染色体を半分に分割するときに真ん中でスパっと分かれればいいんですが、分かれる直前に部分部分を交換してから2つに分かれます(図2)。この交換をどこからどの部分までするかというのはランダムに決まります。この交換作業は基本的にそれぞれの染色体ごとに1回は行われます。

この減数分裂というイベントのおかげで、ある1つの植物の作る花粉の1つ1つが実はほぼ全て別々の遺伝子パターンになっているわけです。
どこかで、”あなたがあなたとして生まれてきたのは奇跡みたいな確率なんだからね”って感じの言葉を聴いたことがあるかもしれませんが、その奇跡みたいな確率にしてしまっている張本人がこの減数分裂というわけです。

このようにして生物は知らず知らずのうちに、多様性を追い求めているのです。
私がこの仕組みを知ったときには、ほんとに生物ってうまく出来ているなと感心したものです。
実は地球外知的生命体が地球上の生物をロボットを作るような感じで設計開発したんじゃないのかと、思ったりもしましたね。

今回は農業というよりも、遺伝学初歩編となりましたね。とりあえず植物の種が出来る前には様々なドラマがあったということを知ってもらえればOKです!!