会社で商品開発を担当していた頃に、実験で使用した実物大の赤ちゃん人形が、使用後に倉庫に乱雑に打ち捨てられていたのを見て可哀想に思い自宅に持ち帰ったのが始まりでした。

名前を「元次くん」と名付け、我が家では歳を取らない末っ子として、かれこれ三十年以上一緒に暮らしてきました。

その間、子供達の相手をしたり、さらに孫達にも可愛がられて、長い年月を私達夫婦と同じ屋根の下で暮らして来ました。

もともと倉庫での保管状態が悪くて、両脚が折れ曲がっていたのですが、近年両眼の周りにクマができるようになり、そのクマが大きく広がるにつれて目の動きが悪くなってきました。

最近では多勢いた孫達も大きく成長して、相手をしてくれる機会もほとんど無く、一日中居間の椅子に腰掛けてジッとしている毎日となりました。

先日、朝いつものように私達と同じ部屋で寝ている「元次くん」を起こした時のことです。

昔は起こしてあげると元気よくパチっと目を開けたのですが、もう瞼が動かなくなっていて、その日も私が指で開いてあげました。

その時でした、開いた「元次くん」の目が、
「お父さん、僕もう疲れてしまって一日中座っているのが辛くなっちゃった。」と私に語りかけてきました。

今朝、松尾寺に人形供養に行ってきました。
山の中のとても趣きのある緑いっぱいの素晴らしいお寺でした。
お寺さんのお話では、供養後には「元次くん」は仏様となって御堂の一つに居てるとのこと。じゃあ、また会えるんだ。

当分は寂しい日が続きますが、私達も老いてきてるので、また会えるのもそれ程先ではなさそうです。

今朝の元次君です

松尾寺です